学園長 式辞



 中学卒業おめでとうございます。

 今日は誕生日の話をしたいと思います。人生に4つ誕生日があると言われています。4つとは何か。少し考えてみてください。1つ目は、もちろん諸君たちが生まれた日のことです。4つ目は、おそらく死ぬときのことです。だから、4問中2問は楽勝です。
 では、2つ目と3つ目の誕生日は何か。私は時々生徒にこの質問をします。この質問をすると、男の子は2つ目の誕生日は結婚したとき、3つ目の誕生日は子どもができたときと言います。女の子は自分が子どもを産んだときとよく答えます。
 私は、2つ目の誕生日はどういう日かというと、自分に目覚めたとき、つまり自我が生まれたときだと思います。自分はどうして生きているのか、自分はなぜここにいるのかということを考えてその答えを持ったときではないかと思います。ほとんどの人は、このことを高校生や大学生の頃に迎えると思います。中学生のときに自分に目覚めることがもしあったなら、それは大変良いことだと思いますが、もしそうでなくてもがっかりすることではないと思います。
 3つ目の誕生日とは何か。私は、それは宇宙に目覚めるとき、世界に目覚める時だと思います。この世の中を支配している自分がどうすることもできない大きな力、これに気がついた時ではないかと思っています。物理や化学や生物や地学などで、この宇宙を支配している大きな法則を知った時、道徳と良心と平和を学び人の心の普遍的価値を哲学という名前で学んだ時、それが宗教でなく真の意味で神に目覚めたときとなるのではないでしょうか。
 自分に目覚めるということは、自分と自分以外の人との関係において自分を意識することだと思います。生まれてきたことに感謝をする。毎日に感謝をする。「仰げば尊し」という卒業式でよく歌われる曲の歌詞にも、まず先生に感謝、次に友達に感謝、そして学校の校舎に感謝する。今日は「仰げば尊し」を歌いませんが、その歌詞について考えてほしいと思います。

 また、これから高校に入ってなりたい自分を目指して勉強して、大学を選んで入試に挑戦しなければなりません。そのときに自分に元気をつけるために、なりたい自分に近い、自分の夢を実現した偉大な先人の伝記を読んでみてはどうでしょうか。伝記というのは、たくさん読めばそれだけの人生を先取りして経験したことになります。こんな楽しいことはありません。

 それでは皆さん。4月に高校生になるときにお会いしましょう。


2014年3月18日 須磨学園 学園長 西 和彦