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2025年度第1学期始業式 高校校長訓話

 おはようございます。本日新年度を迎える学校としての「正月」の日にあたり話をします。

 皆さんには、新年度の幕開け、新たな始まり、節目の日を迎えるにあたり、それぞれが改めて「初心」を明確に意識してほしいと思います。「初心」という言葉の意味は、端的にいうと「最初に思い立った時の純真な気持ち」となっています。皆さんの中学入学の時、高校入学の時、あるいは今取り組んでいることを始めた時…、その時の純真な気持ちというのはどのようなものであったかを覚えているでしょうか?

 少なくとも何かを始める、何かが始まるという時の人の決意、意志、気持ちは、その人自身が産み出した純真なものであり、主体的な気持ちに基づくものであったはずです。たとえ誰かに勧められたにせよ、誰かに後押しされたにせよ、最終的にその道を歩み始めたのは自分の足であり、それを動かしたのは自分の意志であるはずです。しかし時が経つにつれて、時にうまくいかないことがあると、誰かのせいにしたり、自身の歩んでいる道を否定したり、引いては歩み始めたときの思い―つまり初心―を忘れ、その道を選んだことさえも自身の思いによるものではなかったかのように、誰かに言われたせいだと後ろ向きな気持ちになってしまうこともあります。

 皆さんは、自分自身の大切な人生の主役として行動できているでしょうか?誰かの指示通りにしか動けていないことはないでしょうか?誰かの目ばかり意識して行動していないでしょうか?自分自身の大切な決定を誰か任せにしていないでしょうか?自分自身の習慣が誰かによって作られたようなものになっていないでしょうか?

 少なくともこれから先、勉強や部活動はもちろん、この須磨学園での生活の全てにおいて、そしてその先の社会や世界で「なりたい自分」として活躍するために求められることは、「主体性」です。主体性とは、一般的に「自らの意志・判断によって行動しようとする態度や性質」を意味します。採用の場面においても、「企業が学生に求める要素」として「主体性」は、常にトップに位置づけられています。では主体的な姿勢を身につけるためには、どのような心がけが求められるのでしょうか?ここで大切だと思うことを3つ紹介します。

 まず1つ目は、『物事を自分ごととしてとらえる』という心がけです。例えば自分の役割以外の話を聞いた時も、「自分だったらどうするだろうか?」と考える意識、そしてその習慣が大切だと思います。周囲にあることを、人ごとで済ますのではなく、常に「自分だったら…」という意識をもって受け入れるように心がけてみてください。ぜひ周囲にいる主体的な行動をしていると思う人とたくさん話をして、その心がけを学んで、可能なことは真似てみるというところから始めてほしいと思います。

 2つ目は、『自ら率先して問題に取り組む』という姿勢です。率先して問題に取り組むことができるのは、主体性がある人の大きな特徴です。主体性がある人は、指示を受ける前に自ら考えて、失敗を恐れず進んで取り組むことができます。まずは小さなことからでもよいので、今までだったら率先して動けなかったと思うようなことについて、思い切って動いてみてください。何事も抽象的に考えたことを具体化することが大切です。小さなことでもよいので「自分で考えて行動した」という成功体験を増やすことで、徐々に主体性が磨かれていきます。そのために求められる心がけは、「失敗を恐れてやらずに後悔するよりも、チャレンジして失敗するほうが経験を通して成長することができる」と前向きに考えることだと思います。何かのゲームみたいに、馬車に引っ込んでいても経験値が得られる…などのおいしい話は現実では基本的にありません。表に出て戦うのです。

 先週末の入学式でも引用しましたが、ノーベル平和賞受賞者のマザー・テレサは、次のような言葉を残しています。それは、『導いてくれる人を待っていてはいけません。あなたが人々を導いていくのです』という言葉です。前向きな言葉ですね。これは、とにかく集団のリーダーになりなさい、ということではなく、自分の人生の主役である自分自身の「主体性」を育みなさいというメッセージだと捉えています。大切な自分のあり方について、自分の行動について、自分がやると決めたことについて、自分の進む道について、誰かに考えてもらったり周りに流されたりするのではなくて、自分で主体的に考えて、判断して、時には苦しみ、時には失敗し、それでも自分で考えて、向き合って、乗り越えていってほしいと思います。

 そして主体性を身につけるために求められる心がけの3つ目は、『変わることを恐れない』という意志です。変化に対して前向きに対処できるのも、主体性がある人の特徴です。これも先日の入学式で引用したのでかぶりますが、大切だと思うので繰り返します。「種の起源」などの著書で有名な自然科学者のチャールズ・ダーウィンの言葉です。それは、『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは“変化できる者”である』という言葉です。

 いつの時代にも、何事にも通ずるような本当に普遍的な言葉だと感じます。要は、変化のないところに成長はない、ということだと思います。「多様性」という言葉をよく耳にしますが、多様性というのは「様々な価値観を柔軟に“受け入れる”」というだけではなく、「様々な価値観に合わせて自分を柔軟に“変える”ことができる」という意味でも大切なのだと思います。そして、柔軟に変わろうとする者こそが、その対極にある「変えてはいけないもの」という大切な価値を見出し、それこそが「主体性」の源となるものであると確信しています。

 ぜひ皆さんは、この新年度の幕開けにあたり、この丘の上での生活において、誰かに何かに流されるのではなくて、自分で主体的に考え、自分で主体的に行動してください。小さなことからでもいいのです。周囲の評価や失敗を恐れず、自分のチャレンジや変化を楽しもうという姿勢を育んでください。どんな場面も、いかに些細な場面であっても、それら全てが人生にたった1回しかない場面ですから…。

 特に新高校3年生の皆さんにとっては、これから学校行事などあらゆることが「須磨学園生活最後の…」という枕詞のつく機会となります。大いに元気を出して悔いなく取り組み、学校を、後輩たちを導く大きな推進力となってください。いつも言っていますが、「勝ちたい」という思いと「勝たせたい」という思いが最大限に融合するのはこの丘の上です。そしてそれは、皆さんの「勝ちたい」という主体的な姿勢が前提となります。これまでも、これからも、皆さんを熱く導いてくれる先生方を最後まで信じて、安心して、最後まで全員で、誇りをもって最後の一年を悔いなく力強く走り抜けてください。

 さあそれでは、先日の入学式を経てそれぞれが「先輩」となった皆さん、全員の主体的な姿勢という名のパワーを原動力に、力強く前進しましょう。

2025年4月7日 高校校長  堀井 雅幸