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2024年度 2学期終業式 高校校長訓話

おはようございます。2学期の終業式にあたり話をします。季節はめまぐるしくめぐり、厳しい暑さの夏から、しばらく過ごしやすい秋を経て、今は本格的な底冷えの冬を迎えています。

この2学期は学校行事なども多く、平素机に向かっているだけではできないような数多くの貴重な経験をすることができた学期であったように思います。皆さんはそれらの経験の中で、様々な感動を生み出してきました。10月の体育祭を振り返ると、皆さんのエネルギーを感じる本当によい体育祭であったと思います。当日の講評でも伝えましたが、皆さんの姿勢とパワーに救われた気持ちが鮮明に思い出されます。加えてそれぞれの学年が無事に、数々の有意義な研修旅行や校外行事を実現することができました。また11月には、須磨学園の栄えある102周年を祝う式典とともに、昨年から新たにお招きしている指揮者のもと、本格的なオーケストラによって、素晴らしいハーモニーに彩られた芸術鑑賞会を行うことができました。さらに昨日は、午前に中学生と高校1年生それぞれのレシテーションコンテストが開催され、ファイナリストの皆さんの素晴らしいスピーチを聞くことができました。人の思いや感情がともなったときに表れる言葉の魅力や底力を改めて感じることができる素晴らしい機会でした。また、午後には兵庫県の公館において、マロニエ賞の授賞式がありました。例年紹介していますが、マロニエ賞というのは、兵庫県の私立学校に通う生徒の中で、スポーツの大会や文化活動のコンクールなどにおいて、全国1位、または世界3位以内の成果を上げた面々に送られる非常に名誉ある賞です。本校からは、パリオリンピックで見事銀メダルを獲得した水泳部の玉井陸斗君、そして吹奏楽部から、アンサンブルコンテスト金賞、アンサンブルコンクール金賞ならびにグランプリを受賞したメンバーが表彰の対象となり、非常に誇らしい機会となりました。また先日壮行会を行った陸上部については、明日全国大会で都大路を走ります。皆さん、現地で、またはテレビでしっかり応援しましょう。今学期は、他にも数多くの部活動の成果を耳にする機会があり、皆さんの活躍に改めて敬意を表したいと思います。このようにこの2学期はそれぞれ、普段の生活ではなかなかできないような貴重な体験、いつもなら気づかないような新たな発見、そして生涯心に残るようなかけがえのない思い出を、数多く得ることができたのではないでしょうか。それらの素晴らしい経験を経て、皆さんが元気にこの終業式の日を迎えることができていることを心から嬉しく思います。

さて、いつもならこのあたりで、もうすぐクリスマスなのでサンタクロースにまつわるお話でも…などということも多いのですが、今回は誰かの名言を借りずに自身が気になっていることをお話ししたいと思います。

今の世の中は、時にSNSで人のあげ足をとったり、人のことを誹謗中傷したり、大勢に流されて無責任に人を責め立てて傷つける、というようなことも多く、全体的にどこかギスギスした部分があるように感じます。毎日のように、SNSでの炎上や誹謗中傷、それをきっかけとして起こった悲劇などのニュースをよく目にする状況となっています。

例えば先日も、あるプロ野球選手についての話を聞きました。その選手はおばあちゃん子で、小さいころからよくお世話になっていたおばあちゃんが本当に大好きでした。しかしその大切に思っていたおばあちゃんが亡くなった日、おばあちゃんのところにかけつけるよりも、自身の使命感からプレーをすることを決断しました。そのような状況下で、試合の流れに影響するようなまずいプレーをしてしまったところに、「そんなこと気にしながらいいプレーできるわけないだろ」、「気になって集中できないなら帰れよ」「判断がクズだな」などの非難がSNSなどで数多く寄せられたようです。誰もその選手の思いなど知らずに無責任にそのような言葉を浴びせかけるのです。― その選手にとって、どれだけおばあちゃんが大切な存在であったのか…、 どれだけその日に本当はおばあちゃんに会いに行きたかったか…、お世話になったおばあちゃんに、もう自分の頑張っている姿を見てもらえないという思いを抱えてプレーすることがどれだけ難しいことか…、おばあちゃんとの数々のあたたかい思い出を思い出すとどれだけ涙があふれてくるものか…、そのような状況の中、打ちひしがれるぐらい辛い思いでプレーすることにどれだけの思いや覚悟が込められていたのか…、― 誰もがその選手の真の思いなどわからないまま、感じようともしないままに無責任に集中して非難を浴びせるのです。「そんな日ぐらいおばあちゃんのところに会いに行ってあげてほしいな」と思うこと自体は、決して悪意ではないと思います。しかし大勢にのまれて好き勝手に無責任な言い方を浴びせるのはもはや悪意だと思うのです。今回の例だけではなく、世間では、人の命にかかわるような心の傷を負わせるぐらいの書き込みが横行しているようです。ともすれば言った側、書いた側は、名前を名乗りもしません。この場合だと相手の意見も聞くことはありません。その場限りで言ったことや書いたことは忘れているかもしれません。言われた側、書かれた側の気持ちなど思いを馳せることもないままに、ただその時に思ったから吐き捨てたという感覚なのかもしれません。しかし言われた側、書かれた側は、それによってさらなる傷を負ってしまうのです。

世の誰もが、誰かにとっての大切な存在であり、それぞれが特別な感情、特別な事情や大切な何かに基づいて生きています。その大切な人が言葉の暴力などによって苦しめられた場合、自身はどう感じるだろうか、我々はいかなる時にもそこまで踏まえて自らの言動を事前に自制できるようにならなければならないと思います。言われる相手の事情など目もくれずに、言いたい非難だけを無責任に垂れ流す時間とエネルギーがあるなら、それをもっと自分の大切な人たちのために使って欲しいと思います。自分の事を大切にしてくれている人たちに喜んでもらうために使って欲しいと願います。

皆さんが誰かのことを無責任に非難するような人たちだとは一切思いません。しかし、皆さんにはぜひ、今皆さんの隣にいてくれる人の存在というのは決して当たり前ではないということ、そして自分にとっての大切な人を大切にするということに自分の時間とエネルギーを使うことの方が、いかに自分の心や人生を豊かにするかということについて、思いを馳せてほしいと思います。

うまくいかなくて気持ちが沈むような時、いらいらしてしまうような時こそ、少し立ち止まって、大切な人は誰か、自分を大切にしてくれる人は誰か、そしてそういう人たちを自分は大切にできているか、そういう人たちを大切にする自分の行動とはいかなる行動であるのか… そのような思いを忘れないように心がけてほしいと思います。その心がけがある人は、他の誰かにとって誰かの大切な人も、自分の憂さ晴らしや何となくで無責任に傷つけるようなことはしないはずです。

私も含めてですが、人はよく「時間がない」と言います。しかし時間というのは作るものだと思います。大切な人との時間、大切な人のために時間、そしてその大切な人たちにとって大切な自分という存在…、それを守るための時間はきちんととるべきだと思います。

明日からは冬休みに入り、間もなく年末年始の時期を迎えます。自分にとって本当に大切な存在、自分を本当に大切に思ってくれる存在、そして自分が本当に大切にしたいものについて思いを馳せることに時間をつかってくれることを期待しています。短い期間ではありますが、大切な「心・技・体」のうち「心」を整え成長させるよい期間を過ごしてください。

さて最後になりますが、高校3年生の皆さんはいよいよ勝負の年の幕開けです。何度も言ってきましたが、現役生が最も力を伸ばすのはここからです。特に須磨学園では顕著です。これはもはや皆さんの先輩が実証しています。皆さんが目標に向かって3年間、または6年間頑張ってきたのはやはりこの丘の上なのです。皆さんの「勝ちたい」という思いと、先生方の「勝たせたい」という思いを融合させて、須磨学園の環境を最大限活かして、最後まで全員で力強く走り抜けてくれることを期待しています。皆さんの健闘を信じて、心から応援しています。

それでは全校生の皆さん、残りわずかとなった年末の日々で2024年のよい締めくくりをして、新たな年の挑戦への決意を「信念」として抱き、よい「心」で来たる新年を迎えてください。

2024年12月21日 高校校長  堀井 雅幸